習志野市は2023年度より、市立小・中・高校「コミュニティ・スクール」を推進していく。
秋津小学校
秋津小学校(習志野市秋津3)は2002(平成14)年度から3年間、文部科学省より全国の7自治体9つの小中学校の一校として、「新しいタイプの学校運営の在り方の実践研究」の指定を受け、2006(平成18)年に千葉県初のコミュニティ・スクールとなった。千葉県内でも多くの学校がコミュニティ・スクール化されているが、現状や、これから市内の学校がどんな学校運営に変わっていくか、教育委員会・秋津小学校・秋津地域ボランティアに話を聞く。
――学校運営協議会が設置された学校をコミュニティ・スクールとしていますが、仕組みを教えてください。
「学校と保護者や地域の方などと知恵を出し合い、学校運営に反映させることで、一緒に協働しながら児童生徒の成長を支え、『地域とともにある学校づくり』を進める制度です。『学校運営協議会』を設置した学校のことを『コミュニティ・スクール』といいます」
――「学校運営協議会」とはどのようなものですか?
「学校運営協議会は、保護者や地域の方が一定の権限をもって学校運営に参画する制度です。 学校の運営方針などを承認し、学校の目標や課題について意見交換を行い、学校と家庭、地域とが一体となって子どもたちの成長を支えていきます」
――学校と家庭、地域が積極的に学校運営に参加することで地域活性化にもつながると思ってもいいですか?
「その通りです」
――文部科学省の研究指定校とされ、他市のよりも長い歴史があり、市としてはどのような結果が得られていると思いますか? 強みは何だと思いますか?
「秋津小学校では、地域の方、保護者等が学校運営に携わることで 、地域に開かれた学校として、よりよい教育を実現しています。学校運営方針を受け、地域や保護者の方に環境整備をはじめ、さまざまな場面でどのように学校を支えていくのか、秋津小学校をモデルに進めていくことができるのが強みであると捉えています」
――これからの楽しい地域、まちづくり、学校づくりのモデルになっている学校がすでに出来上がっていることも強みであり、学校として地域に貢献しているように感じます。
「その通りだと考えます。見方を変えると学校が地域に支えられているということも言えます」
――ありがとうございました。
――今までの秋津小学校の取り組みをお聞かせください。
「コミュニティ・スクールに指定されたのは2006(平成18)年ですが、1980(昭和55)年の開校当初から地域に協力してもらい学校が運営されてきました。地域の皆さんには、まずは『ウサギ小屋』。1、2年生が主に使える上履きを脱いでのんびりとゴロゴロできる『ゴロゴロ図書室』を開いていただき、地域の皆さんが利用できる『秋津コミュニティー』、グラウンドの西側にあるカキの木やクリの木が植えられた『果樹園』、学校の南側にある『ビオトープ』などを、地域の皆さんの協力の下でつくっていただきました」
――子どもたちのために地域の方が校内でいろいろ作られたのですね。どのような形で運営されているのでしょうか?
「まずは、学校運営協議会が現在、年3回、主に保護者、地域の方、学識経験者、教育委員、現在の学校教職員15人で開かれています。現在は、年3回の会議で
1つ目、校長の方針を承認していただくこと
2つ目、学校評価をもとに、教育活動への助言を頂くこと
3つ目、次年度の方針の相談
こうしたことが話し合われます。これは地域差がありますが、本校では2023年度から年4回にしようと検討中です」
――現在、市内唯一のコミュニティ・スクールですが、良い点、面白い点についてお聞かせください。
「学校をオープンにしているので、自分たちの考えだけに偏らず、地域や保護者からアドバイスを頂けるので、学校を運営していく上で有効的に働いています。子どもたちは多くの大人に支えられ、助けられている。これはとても大きい。社会がとても希薄になってきている中、地域ボランティアが居てくれることで、さまざまなことを学び、故郷意識が育てられていると感じています」
――地域の人に支えられて故郷と呼べる場所になっているということですね。子どもたちの様子はどうですか?
「保護者や学校以外の大人と接することができることで、ハキハキと元気にコミュニケーションを取れる子どもが多いと感じます」
――確かに元気なお子さんたちが多いと感じます。保護者や地域が大きく関わる同校と他校とではどこが大きく違っていると思いますか?
「目に見えない校外での出来事でも、保護者や地域の方がいることで、教員としては安心して仕事ができていると思います。皆さんに支えられることで、365日応援されているという実感が持てて、期待に応えていく使命感が教員の間で出てきます。皆さんに支えられることで、私たち教員の働き方改革にも大いにつながっていると思います」
――例えばどんなことがありますか?
「現在、他校からお越しの技労士の先生に『秋津小学校はいつもごみ一つなく、とてもきれいですね』と言われます。これも皆さんの協力のおかげです。率先してクリーン運動をしてくれています。その分、子どもたちのために時間を使えるので、私たちにとって大変助かることです」
――子どもたちだけでなく、教育現場の先生も大変助けられているということが分かりました。最後に、県内では初、国の中でもかなり早い段階で注目され、コミュニティ・スクールのパイオニア的存在ではないかと思うのですが、いかがですか?
「県内外から視察に来られます。大学の先生なども本校を見に来校されることもあります。本校がモデル校であることは一つの誇りでもあります」
――ありがとうございました。
――学校について、今までどのように地域の皆さんで話し合ってきたのですか?
「以前より、地域住民・学校職員・PTAの代表が学校と子どもたちに関わるさまざまなことを話し合う場がありました。学校運営協議会の土台となっています。今では、『パートナー会議』という形で、年に9回、学校運営協議会とは異なる形で話し合い、情報交換の場ともなっています」
――皆さん、新たな仕組みができあがる前からボランティアに携わってきたのですね。
「秋津小学校のボランティアは4つに分かれて活動支援が行われてきました。
1つ、環境支援。これは、クリーン運動、グリーン活動です。
2つ、安全支援。登校の見守り、学校からの依頼で校外学習への同行、1年生の入学式後1週間の下校の見守り。
3つ、情報支援。ホームページの作成。
4つ、学習支援。地域の祭りなどで行われる「ばか面」の指導、おはなし会、米作り。
などが主な活動となっています。ボランティア未登録の方でもできることで、活動に参加してもらっています。コロナ禍以前は、学習支援に関しては、他に手遊び、折り紙、編み物、郷土料理のまつりずしづくりなどもありました」
――ボランティアが学校づくりをお手伝いしているのがよく伝わってきます。加藤校長に伺った「故郷意識が育っていく」という理由がわかりました。学校と地域が関わり合うことで、どのような点が面白いか、聞かせてください。
「どうしても今は高齢者中心のボランティアなので、学校に来ると子どもたちから元気に声をかけてもらえる。ボランティアとしても楽しんで活動しています。例えば、交通ボランティアで、『今日は○○ちゃん来てないな』とすぐ分かる方もいます」
――それはすごいことですね。地域の皆さんがさまざまな形で支え合っていると感じます。
このように同市内の学校がコミュニティ・スクール化されると、地域や保護者が学校運営に参画していくことになる。
――学校はこれからどのように変わっていくと思いますか?
「大きく4点ありますね。
1点目は、これまで以上に学校運営について理解が深まり、共通のビジョンをもって学校の課題解決ができること。
2点目は、学校支援のボランティアなどの協力が得やすくなり、教育支援が充実すること。
3点目は、学校からの情報発信がスムーズに行えること。
4点目は、保護者の要望も学校運営協議会を通して、協議することができ、よりよい教育活動につながること。
このことから、これまで以上に学校と地域、保護者と連携し、共に子どもたちを育んでいけると考えています」
核家族化された社会、つながりが少ない社会をどうつなげていくかは、私たちの行動次第となっている。SNSやインターネット上でのつながりではなく、人と人が実際に触れ合うことが実社会では、とても大切で重要視されるべきこと。互いに見守りあう気持ちから地域のつながりを持ち続けることが、子どもたちの心の成長に大きく関わると思う。コミュニティ・スクールという新たな仕組みの学校から巣立っていく子どもたち。「楽しい学校、大好きな街、自分たちが育てていく学校や街」という思いを持ち、大人になっていってほしいと願う。
習志野市の市立学校は、2023年度より学校運営協議会が設置され、小中学校には、地域学校協働本部も設置される。文教都市の同市の学校は、地域と共に学び成長していき、学校を核として地域づくりがされていくことになっていく。人づくり、まちづくりの習志野市ならではの学校づくりは、春から始まる。