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【それいけ!習志野】「正当な補償」で地域の土台を支える 習志野と「あいうえお」の精神 株式会社横打・横打社長インタビュー


 習志野で活動する人の横顔や思いを伝える連載企画「それいけ!習志野」。

 今回話を聞いたのは、株式会社横打の横打研社長。公共事業に伴う建物調査や補償コンサルタント業務を長年手がけ、道路や施設整備、防災事業など地域の暮らしを支えてきた。

 取材の中で印象に残ったのは、「正当な補償」という言葉への強いこだわりと、「縁があっての運」という人生観だった。建物や土地だけを見ているようでいて、実際にはそこに暮らす人の生活や、商売をする人の営みまで見つめる仕事。派手に目立つ職種ではないが、街が更新され、次の世代へ受け継がれていくために欠かせない役割。創業から50年以上、習志野に根を張ってきた会社の歩みと、これから受け継いでいきたい思いについて聞いた。

 

プロフィール
株式会社横打 代表取締役 横打研。1960(昭和35)年、山梨県生まれ。父の仕事の関係で幼少期は各地で暮らし、中学2年の終わりごろに習志野へ戻る。船橋の中学校から船橋東高校へ進学し、明治大学卒業後に家業へ。1972(昭和47)年創業の同社で、建物調査を中心とした補償コンサルタント業務に携わり、地域インフラを支える立場から公共事業と向き合ってきた。

 

―――まず、これまでの歩みを教えてください。

横打社長:
 生まれは山梨なんですが、父が転勤の多い仕事だったので、子どもの頃はいろいろな場所で暮らしました。小学校の途中で船橋に移り、その後、中学2年の終わりごろに習志野へ戻ってきて、それ以来ずっとこの地域にいます。もう50年以上になります。大学は明治大学に進みましたが、4年の時に父が亡くなりまして、そのまま卒業後に会社へ入りました。父が創業し、その後は母が社長を務めて会社を守ってきました。
 

―――会社はどのように始まったのですか。

横打社長:
 父はもともと、今の仕事につながる用地関係の仕事を役所でしていました。1972年に役所を辞めて独立し、公共用地の取得や補償の仕事を専門的にやっていこうと、この会社を立ち上げたんです。最初は自宅を拠点に始め、その後、当時の津田沼3丁目、今の鷺沼の市役所近くに事務所を構えました。地域に根差して始まった会社なんです。

 

 ―――現在の主な仕事について教えてください。

横打社長:
 創業当初は測量と建物調査が半々くらいでしたが、今は8割~9割が建物調査を中心とした補償コンサルタント業務です。道路を広げる、公共施設を整備する、そうした事業で建物や工作物を移転していただく必要がある時に、現在の価値や移転に必要な費用を調査して算定します。建物の間取りや部材を一つ一つ見て、「今この建物を建てたらいくらかかるか」を出す。そこから経過年数なども踏まえて補償額を組み立てていきます。

 

―――かなり専門的な仕事ですね。

横打社長:
 そうですね。ただ、建物だけ見れば終わりではないんです。庭木があれば移植費用、石があれば運搬費用、店舗なら営業損失、工場なら機械の移設費用まで見ていきます。つまり、そこにある「暮らし」や「仕事」がどう動くかまで考えるんですね。最終的には、移転していただく方に「なぜこの金額になるのか」をきちんと説明できるだけの根拠を持つことが大事です。

 

 

正当な補償

 

横打社長:
 公共の仕事ですから、単純に「ここをどいてください」という話ではありません。補償される側には生活がありますし、長年続けてきた商売もあります。だからこそ、調査方法も算定方法もきちんと決まっていて、それに基づいて公平に示さなければいけない。私たちは、その「正当な補償」を支える仕事をしているんだと思っています。目立つ仕事ではないですけど、すごく大事な役割です。

 

―――最近、仕事の内容に変化はありますか。

横打社長:
 あります。昔は調査や算定をして役所に納めれば、その先の説明や交渉は自治体の職員が担うことが多かったんです。でも最近は職員の数も限られていて、補償内容の説明や交渉まで任されるケースが増えてきました。だから今後は、建物調査だけでなく、用地補償全般を総合的に扱える会社になっていけたらと思っています。

 

―――会社として、これから目指したい姿は。

横打社長:
 何か全く新しいことを始めるというより、今やっている仕事をしっかり深めていきたいですね。防災や国土強靱化(きょうじんか)の話もありますし、老朽化してきた道路や施設など、これから手を入れていかなければいけない社会資本はたくさんあります。壊れてから直すより、悪くなる前にきちんと整える方が、結果的には地域のためにもなる。私たちはそういう整備を下支えする立場として、国民のためになる仕事を着実にやっていきたいと思っています。

 

―――その意味では、社会全体への思いも強いのですね。

横打社長:
 そうですね。この30年くらい、インフラへの投資はずいぶん抑えられてきたと感じています。でも、私たちは先人たちが整備してきた道路や橋、公共施設の上で暮らしているわけです。だったら次の世代にも、きちんとした形で渡していかなければいけない。そのために必要なところには、しっかり手を入れていくべきだと思います。会社の仕事も、その流れの中にあると感じています。

 

―――一方で、課題だと感じていることはありますか。

横打社長:
 やはり会社の人手不足ですね。この仕事は専門性が高いように見えますが、必ずしも特定の学部を出ていなければできない仕事ではありません。少しずつ知識を身につけながら育っていける仕事です。だからこそ、まずは会社に興味を持ってもらうことが大事。今の社員は35人ほどですが、将来的にはまず50人規模くらいまでは育てたい。以前は40人近くいた時期もありましたが、ベテラン世代の退職も進んでいるので、次の担い手を育てることが大きなテーマです。

 

―――若い人に向けて意識していることはありますか。

横打社長:
 働く環境も含めて、「ちょっといい会社だな」と思ってもらえるようにしたいですね。思い切って社屋を整えたのも、その一つです。

株式会社横打 新社屋前にて

 露出を増やすのも採用のためという面はあります。うちの仕事は、入ってから覚えていける部分が多い。だからこそ、興味を持って来てくれた人を、しっかり育てていきたいと思っています。

株式会社横打本社 多目的室にて

 

――習志野という街の魅力はどこにありますか。

横打社長:
 やっぱり人のつながりが強いところですね。私は中学・高校時代からの地元ネットワークがあったわけではないんですが、商工会議所や法人会で活動する中で、ちゃんと地域に受け入れてもらってきた実感があります。顔の見える距離感があって、業種を超えてつながれる。そういう関係って、仕事だけではなくて無形の財産なんですよね。習志野は、その財産をつくりやすい街だと思います。

習志野市マスコットキャラクター 「ナラシド」・「ソラシノ」と横打社長

 

――習志野に対して、期待することはありますか。

横打社長:
 もっと元気になれる街だと思っています。そのためには、やっぱり土台となるインフラが大事です。道路や街並み、公共空間が整っていけば、人も集まりやすくなるし、街の活気にもつながる。民間だけでできることには限界がありますから、必要な投資はきちんと行って、地域の魅力を形にしていけたらいいですよね。

 

―――仕事以外の楽しみも教えてください。

横打社長:
 趣味はクラシック音楽を聴くことと千葉ロッテマリーンズの応援です。試合は年間20試合くらい見に行きます。シーズンシート(1シーズンを通じて特定の座席を確保できる年間指定席制度)もあるので、社員に福利厚生の一環として楽しんでもらっています。最初はあまり興味を示さなかった社員も、最近は「行きたい」と言ってくれるようになりました(笑)。ビジターの球場に行くのも好きで、その土地のおいしいものを食べるのも楽しみの一つです。

 

―――音楽との関わりも深いそうですね。

横打社長:
 そうですね。クラシックはずっと好きですし、地域で気軽にクラシックを楽しめる場があるのはいいなと思っています。音楽って、仕事とは直接関係ないようでいて、人との縁をつくってくれる面もあるんですよね。そういう意味でも、地域の中で音楽が身近にあるのはいいことだと思います。

 

―――最後に、大切にしている言葉を教えてください。

横打社長:
 「縁があっての運」ですね。本当に、ご縁に支えられてここまで来たという思いがあります。そして、私が大事にしているのが、愛・縁・運・恩――。「あいうえお」の精神です。人を思う気持ちがあって、ご縁が生まれて、そのご縁が運を運んでくる。そして最後は、支えてくれた人たちへの恩を忘れない。会社も地域とのつながりの中で育ってきたので、これからもその精神を受け継いでいきたいと思っています。

 

 公共事業の現場で、表からは見えにくい部分を丁寧に支え続けてきた株式会社横打。街の更新や防災の重要性が増していくこれから、その役割はさらに大きくなるだろう。横打社長の言葉からは、地域に根を張って働くことの責任と誇り、そして人とのつながりを何より大切にする姿勢が伝わってきた。見えないところで街を支える仕事の先に、習志野の未来を静かに見据えるまなざしがあった。
 

 

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