習志野で活動する人の横顔や思いを伝える連載企画「それいけ!習志野」。
今回話を聞いたのは、谷津で約40年続く精肉店「ハローマザーズ」の代表、風見一輝さん。牛肉や豚肉、鶏肉の販売に加え、焼き鳥や揚げ物でも親しまれる地域の人気店。昨年12月には創業者である父から代表を引き継ぎ、新たな一歩を踏み出した。
大型スーパーが身近にある時代に、「まちの肉屋」としてどう価値を出していくのか。風見さんが大切にしているのは、「安さ」ではなく「おいしさ」で選ばれること。取手市から谷津へ通った下積み時代、地域とのつながり、これからの店づくりについて聞いた。
プロフィール
―――まず、店のこだわりを教えてください。
この辺りは大型スーパーも多くて、値段だけで勝負するのはなかなか難しいんです。だからこそ、「やっぱりここが一番おいしいね」と思ってもらえる店でいたい。鮮度や肉質、ブランドの見極めを大切にして、牛肉なら松阪牛や近江牛のような品質の高いものも扱っています。少しぜいたくでも、食べた時に満足してもらえるものを出したい、という思いですね。
鮮度や肉質にこだわり、品質の高い和牛なども扱う
―――ハローマザーズはどのように始まったのでしょうか。
父がもともと牛肉の卸売りをしていて、この谷津地区にあったスーパーに肉を納めていたんです。その縁で「ここで肉屋をやらないか」と声をかけてもらって、40年前にこの場所で店を始めました。今では店頭販売だけでなく、保育所や小学校向けの卸もやっています。市内の個人の肉屋はかなり減ってきたので、地域の店として続けていかなきゃいけないと思っています。
―――風見さんは習志野市の出身ではないんですよね。
はい、取手市出身です。専門学校を出た後、すぐに家に入ったわけではなくて、スーパー「マルヤ」の精肉部門で4年ほど働きました。そこで現場のことをかなり学ばせてもらいました。その後、ハローマザーズに入ったんですが、最初の5年くらいは茨城県から谷津まで通っていたんです。往復で3時間くらいかかっていましたね。
―――そこから習志野に移り住むことになったきっかけは。
30歳くらいの時に消防団に誘われたのが大きかったです。ここで本気で商売をしていくなら、通うだけじゃなくて、この地域の中に入っていった方がいいなと思ったんです。商店街の人だけじゃなく、もっといろんな人とつながりたいという気持ちもありました。それで約20年前にこちらへ引っ越してきました。住んでみると、習志野って本当にちょうどいい街なんですよ。交通の便がよくて、買い物にも困らないし、自然もある。コンパクトなのに、ないものがない感じがします。
石畳が良い雰囲気の谷津遊路商店街。その一角にある「ハローマザーズ」
―――肉屋さんの仕事の面白さは、どんなところにありますか。
やっぱり対面販売ですね。お客さんの顔を見ながら、その場で肉を盛り付けたり、揚げ物を渡したりして、直接やり取りができる。買ってうれしそうに帰っていく顔や、後日「おいしかったよ」と言ってもらえる瞬間が一番うれしいです。ネットで何でも買える時代ですけど、顔が見える商売にはやっぱり別の魅力があると思います。
―――一方で、今感じている課題はありますか。
技術の継承ですね。これまで自分が現場でやってきたことを、次の世代に渡していく段階に入っています。でも肉屋の仕事って、マニュアルだけでは難しいんです。肉の状態を見て、どう切るか、どう薦めるか、結局は経験と目が必要になる。今、若いスタッフに教えているところですが、そこは一番大事で、一番難しい部分だと思っています。
―――焼き鳥も人気ですが、こだわりはありますか。
焼き鳥は父が始めたもので、もう25年くらいになると思います。手刺しにこだわっていて、肉の掃除(脂身やスジ部分、小骨を取り除くこと)も丁寧にして、食べやすくする。肉屋がやる焼き鳥として、そこは大事にしたいところですね。タレも継ぎ足してきたもので、そこを褒めてもらえるとうれしいです。
―――総菜やおはぎを楽しみにしている方も多いですね。
総菜やおはぎは母がやってきたんですが、体調のこともあって今は以前よりかなり量を減らしています。ただ、常連さんから「また食べたい」と言ってもらえるので、体調の良い時にだけ少し並べるようにしています。曜日も決めていなくて、出合えたらラッキーという感じですね。それでも楽しみにしてくれる方がいるのはありがたいです。
焼き鳥や総菜も人気
―――現在は谷津遊路商店街の理事長も務めています。谷津の魅力はどこにありますか。
小さな商店街ですけど、「ここに来ないとない店」が多いことですね。チェーン店ばかりではなく、それぞれの店に個性がある。石畳の道や、少し落ち着いた雰囲気も谷津らしさだと思います。しかも今は若い店主も多くて、横のつながりもある。そういう意味でも、すごく可能性のある商店街だと感じています。
―――これからのハローマザーズを、どんな店にしていきたいですか。
もっと若い人にも気軽に来てもらえる店にしたいです。専門店って、どうしても敷居が高く見られがちなんですけど、そんなことはないよ、と伝えていきたい。最近は若い世代のお客さんも少しずつ増えてきたので、そういう人たちにも、おいしい肉を身近に楽しんでもらいたいですね。将来的には、谷津らしい商品づくりにも挑戦できたらと思っています。
―――最後に、5年後、10年後の理想を教えてください。
自分がずっと前に出るというより、若いスタッフや若い店主たちが育って、店も商店街も次の世代につながっていく形が理想です。自分もいろんな先輩に経験をさせてもらって今があるので、次は下の世代にそういう場を渡していきたい。ハローマザーズも商店街も、これから先につながる土台をしっかり作っていきたいですね。
現在は谷津遊路商店街の理事長も務める風見さん
谷津で40年。ハローマザーズは、ただ肉を売るだけの店ではない。お客さんとの会話があり、焼き鳥の香りに人が集まり、時には母の味を待つ常連客がいる。風見さんの言葉から伝わってきたのは、専門店としての誇りと、地域の中で商売を続けることへの実直な思いだった。
「値段」ではなく、「おいしい」で選ばれる店へ。谷津の街で、その次の40年が始まっている。